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PCI DSSとは?準拠が必要なケースと「非保持化」との違いをわかりやすく解説【2026年版】

PCI DSSとは?準拠が必要なケースと「非保持化」との違いをわかりやすく解説【2026年版】

結論――多くのEC事業者は「非保持化」でPCI DSS準拠を回避している

「クレジットカード決済を導入するとPCI DSS準拠が必要と聞いたが、何をすればいいのかわからない」――そう感じている事業者は少なくありません。

先に結論をお伝えすると、カード情報を自社で保持しない構成(非保持化)にすれば、多くのEC事業者はPCI DSSへのフル準拠を求められません。StripeやPayPalなどの決済代行を使い、カード番号を自社サーバーに通さない仕組みにすることで、負担の大きいPCI DSS準拠を回避できるためです。

一方で、カード情報を保存・処理・伝送する構成の場合はPCI DSS準拠が必要になります。この記事では、PCI DSSとは何か、12の要件の概要、そして「非保持化」との違いと自社にどちらが必要かの判断軸を解説します。

本記事は制度の一般的な解説を目的としたものです。実際の準拠要件・区分(マーチャントレベル等)は契約する決済代行事業者・アクワイアラ・カードブランドによって異なります。個別の適用は契約先の案内に従ってご確認ください。

PCI DSSとは何か

PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)は、クレジットカード情報を安全に取り扱うための国際的なセキュリティ基準です。VISA、Mastercard、JCB、American Express、Discoverの国際5ブランドが共同で策定し、カード会員データを保存・処理・伝送するすべての事業者が対象となります。

日本では、改正割賦販売法により「クレジットカード番号等を取り扱う事業者」に対して、カード情報の適切な管理(=PCI DSS準拠または非保持化)が求められています。つまりPCI DSSは、クレジットカード決済のセキュリティ・チェックリストにおける「カード情報の適切な管理」を満たす手段の一つという位置づけです。

現在の最新版はPCI DSS v4.0(およびその改訂版)で、旧バージョンからの移行が進められています。

PCI DSSの12要件の概要

PCI DSSは、6つの目標と12の要件で構成されています。全体像を把握しておきましょう。

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要件の概要

目標カテゴリ

1

ファイアウォールの導入・維持

ネットワークの構築と維持

2

初期設定のパスワード等を使用しない

ネットワークの構築と維持

3

保存されるカード会員データの保護

カード会員データの保護

4

公衆ネットワーク上の伝送データの暗号化

カード会員データの保護

5

マルウェア対策(アンチウイルス等)の導入

脆弱性管理プログラムの整備

6

安全なシステム・アプリケーションの開発と保守

脆弱性管理プログラムの整備

7

カードデータへのアクセスを業務上の必要範囲に制限

アクセス制御

8

各ユーザーへの一意のIDの割り当て

アクセス制御

9

カードデータへの物理アクセスの制限

アクセス制御

10

ネットワーク・データへのアクセスの追跡と監視

監視とテスト

11

セキュリティシステムとプロセスの定期的なテスト

監視とテスト

12

情報セキュリティポリシーの整備

セキュリティポリシー

これら12要件は、技術的対策(暗号化・アクセス制御・脆弱性管理)から運用・ポリシー(監視・教育)まで多岐にわたります。フル準拠には相応の体制とコストが必要になるため、多くのEC事業者は次に述べる「非保持化」を選択しています。

「非保持化」とPCI DSS準拠の違い

ここが多くの事業者にとって最も重要なポイントです。カード情報を扱う方法には、大きく2つのアプローチがあります。

項目

非保持化

PCI DSS準拠(フル準拠)

考え方

カード情報を自社で保存・処理・伝送しない

カード情報を扱うが、基準に沿って厳格に保護する

典型的な構成

決済代行のトークン方式・リダイレクト方式

自社でカード情報を保持・処理するシステム

事業者の負担

比較的小さい

大きい(監査・体制整備が必要)

主な対象

中小〜多くのEC事業者

大規模事業者・カード情報を保持する必要がある事業者

非保持化とは

非保持化とは、カード会員データを「保存しない・処理しない・伝送しない」状態にすることです。具体的には、決済代行サービスのトークン方式(カード情報をトークンに置き換える)やリダイレクト方式(決済画面をPSP側でホストする)を採用し、カード番号が自社のサーバーやシステムを通らないようにします。

StripeのElements/Checkout、PayPal、各種決済代行のホスト型決済ページなどがこれに該当します。この構成であれば、カード情報を自社で扱わないため、PCI DSSのフル準拠を求められないケースが大半です。

どちらを選ぶべきか

結論として、特別な理由がない限り、多くのEC事業者は非保持化を選ぶのが現実的です。フル準拠は監査・体制整備の負担が大きく、カード情報を自社で保持する明確な必要性(大規模なサブスクリプション基盤、独自の決済処理など)がなければ、非保持化のほうが低コストで安全性も確保しやすいためです。

ただし、非保持化を選んだ場合でも「Webアプリケーションの脆弱性対策」は免除されません。次に述べる要件11の考え方は、非保持化の事業者にとっても実務上重要です。

要件11が求める脆弱性スキャン・ペネトレーションテスト

PCI DSSの12要件のうち、要件11「セキュリティシステムとプロセスの定期的なテスト」は、AEVUSのようなセキュリティ診断サービスと直接関わる部分です。要件11は、主に次の対応を求めています。

  • 脆弱性スキャンの定期実施:外部・内部のネットワークに対する脆弱性スキャンを定期的(および大きな変更後)に実施する。外部スキャンはASV(Approved Scanning Vendor)による実施が求められる場合がある
  • ペネトレーションテストの実施:ネットワーク・アプリケーション層に対する侵入テストを定期的に実施する
  • 検出された問題への対応:スキャン・テストで見つかった脆弱性を修正し、再テストで確認する

ここで重要なのは、この「定期的な脆弱性スキャン・ペネトレーションテスト」という考え方は、PCI DSSフル準拠の事業者に限らず、セキュリティ・チェックリストの項目3でも同様に求められているという点です。つまり、非保持化を選んだ事業者であっても、自社のWebアプリケーションに対する脆弱性診断・ペネトレーションテストの実施は避けて通れません。

脆弱性診断とペネトレーションテストの違いや、どちらを選ぶべきかについてはペネトレーションテストと脆弱性診断の違いで詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 決済代行(Stripe等)を使えばPCI DSSは完全に不要ですか?

カード情報を自社で保存・処理・伝送しない「非保持化」の構成であれば、多くの場合PCI DSSのフル準拠は求められません。ただし、決済代行を使っていても実装方法によってはカード情報が自社を経由する場合があり、その際は準拠が必要になります。利用しているサービスの構成を確認してください。

Q2. 非保持化にすれば、セキュリティ対策は何もしなくてよいのですか?

いいえ。非保持化はあくまで「カード情報の管理」に関する対策です。会員登録・ログイン・注文フォームなど、あなたが運用するWebアプリケーション自体の脆弱性対策(SQLインジェクション・XSS対策、定期的な脆弱性診断)は引き続き求められます。

Q3. PCI DSSの「マーチャントレベル」とは何ですか?

年間のカード取引件数などに応じて事業者を区分したものがマーチャントレベルです。レベルによって求められる準拠の証明方法(自己問診票SAQ、または訪問審査)が異なります。自社がどのレベルに該当するかは、契約するアクワイアラやカードブランドに確認する必要があります。

Q4. 要件11の脆弱性スキャンは自社で実施すればよいですか?

内部スキャンは自社で実施できますが、外部スキャンはASV(Approved Scanning Vendor)による実施が求められる場合があります。また、ペネトレーションテストは専門的な知識が必要なため、専門ベンダーへの依頼が一般的です。

Q5. 中小規模のECサイトでもPCI DSSを意識する必要がありますか?

はい。規模にかかわらず、クレジットカード情報を扱う以上は「非保持化またはPCI DSS準拠」が求められます。中小規模の事業者は非保持化を選ぶのが一般的ですが、その場合もWebアプリの脆弱性対策は必要です。

まとめ

この記事では、PCI DSSと非保持化について解説しました。

  • PCI DSSとは:カード情報を安全に扱うための国際セキュリティ基準(6目標・12要件)
  • 非保持化との違い:カード情報を自社で扱わない非保持化なら、多くの事業者はフル準拠が不要
  • どちらを選ぶか:特別な必要がなければ、多くのEC事業者は非保持化が現実的
  • 要件11:フル準拠でも非保持化でも、定期的な脆弱性スキャン・ペネトレーションテストと修正対応は避けられない

PCI DSS準拠か非保持化かは「カード情報の管理」の話であり、それとは別にWebアプリケーション自体の脆弱性対策が常に必要です。決済を扱うサイトは、この2つを分けて整理することが重要です。

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